■「閉じこもり」の家庭に共通して見えるもの…
・ 子供の教育は母親まかせ。父親不在の家庭。
・ 母親が教育熱心で、子供に過大な期待をかける家庭。
母親は、子どもが部屋で勉強しているようであれば、満足している。
・ 子供の悩みに気づかない親。
・ 一人っ子の家庭。あるいは、兄弟の歳が離れている家庭。
・ 母親が子どもべったりで、過保護な家庭。
・ 両親が共働きで、家の中にぬくもりのない家庭。
読売新聞
【心と体の健康情報 - 294】
~子育て心理学~「引きこもり」
私の身近にも、社会に出て間もなく引きこもってしまい、十年たった今もほとんど一日中部屋の中で過ごし、社会復帰できないでいる、
三十過ぎの青年がいる。
社会人になってしばらく会社勤めをしたが、人間関係がうまくいかなかったのか、突然会社を辞めてしまい、それ以来
「引きこもり」が続いているのです。
私がその家庭を訪ねた時も、部屋から出てくることはなかった。
一日中パソコンと向き合っているようなのです。
中流家庭で、何不自由なく育った二人兄弟の弟さんです。とりわけお母さんが教育熱心というわけではない。 幼いころからの育て方に何か問題があったとしたら、お兄ちゃんがずばぬけて頭がよく、勉強が出来て秀才だったことです。
当然、両親の期待も長男に集中…。何かにつけて、兄弟が比較される。
「お兄ちゃんを見習いなさい」「お兄ちゃんのように勉強すれば、成績が上る」いつの頃からか弟さんは、「僕は駄目な子なんだ」
「生まれてこなければ良かった…」と、一人殻の中に閉じこもるようになったのでしょう。
ご両親は、何とか一人前に育てようと、岐阜県の全寮制の男子高校に入れた。
スパルタ教育で有名な学校である。性格は内気で温和な弟さん、学校でいじめに合っていたようです。
ご両親には、これといった原因が見当たらない。本人に理由を尋ねても、具体的には何も話してくれない。
小学生のころはとても素直でいい子だったのに…。
引きこもりの原因と思われる問題点を幾つかを並べてみると…。
■環境的要因では
(1)ひとりっ子で、甘やかされて育った
(2)兄か弟が優秀で、何かにつけて比較され、差別されてきた
(3)親が教育熱心で、親の期待を一身に背負って育った
(4)小学・中学・高校、ずっといじめられていた
■引きこもりの子供に共通する特徴は
(1)親思いで、親を決して批判しない
(2)喜怒哀楽のような自然な感情を…中でも悲しみを閉じ込めてしまう
(3)相手に合わせようとする。
自分のことを自分で決められず、親や周りの意見に左右されやすい
(4)一所懸命生きているにもかかわらず、「もっと頑張れ」と、もう一人の自分がささやく。
(5)自分自身を誉めることができず、認めることができない。
人と争うことが嫌いな、心の優しい子が多いのです。
原因と思われるものは幾つか見える。しかし、決定的原因と決め付けるものがない。
また、子育ては夫婦共通の責任であるにもかかわらず、子どものしつけ・教育は妻に任せっぱなし…私がそうでした。それにも関わらず、
「お前の育て方が悪い」と、夫が妻を責めるのが日本の家庭。子を思う母は、ノイローゼになるくらい悩みを抱え込んでしまう…。
登校拒否の場合と同様、世間の常識に当てはめて、親の体面・立場から本人を厳しく叱ったり、優しくさとしたりして、 あれこれ試みてみるものの、何とかしようとすればするほど、状況は悪化するばかり。アリ地獄のよう…
子どもの将来を思う気持ちは皆同じ。 あせらずゆっくり、当面は子どものしたいようにさせて、 お子さんから話を切り出せる環境づくりに努め、話を聴いてあげるだけにするといった、我慢がいるようです。
腫れ物に触るような接し方をしていては、いつまでも問題が解決しないと思うのですが、当事者になってみないと、
この苦しみはわからないだろうし、両親が思い悩むだけでは、この問題は解決しそうにはありません。
いずれにせよ、現実は甘くないのです。