■欧米と日本では、「名誉」に対する観念が違う
"自殺"を考えても、封建時代の切腹は、武士の名誉を保つための行為だが、キリスト教圏の西欧では、自殺は罪悪とされてきた。
軍隊で重要なのは「規律」。命令への絶対服従が求められる。
軍人の義務は戦争で戦うこと。死を恐れず、義務を全うしなければならない。
これは、日本も欧米も同じ。
米軍には、「戦況が苦しくなれば降伏してもいい」という、暗黙の了解がある。
「死んでも守りきれ」という命令が、上官から下されるかどうかだ…。
日本の場合、戦争に行って国のために命をささげることが、軍人としての名誉であり、欧米との違いはそこにある。
「特攻」や「玉砕」は、日本の軍人に期待される行動の延長線上にあった。
指揮官の命令で軍隊は動く。命令がなければ、玉砕も特攻も生まれなかっただろう。
防衛大学教授 河野 仁著「玉砕の軍隊・生還の軍隊」より
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 167】
「日本が核保有したら…」
北朝鮮の二枚腰の薄氷を踏むような外交戦略。その裏に、辣腕の戦略家がいるような気がする。
「日本はいつ核兵器を開発してもおかしくない」。海外では長年、こうした懸念が根強い。
なぜか。日本は2005年末現在、核兵器の原料となるプルトニウムを43.8トン保有している。
国内に貯蔵している5.9トンだけでも、原子爆弾が700発作れる。
原子力発電の技術水準も、米仏と肩を並べるほど高い。
「核には核で対抗すべきだ」「独立国家が核保有を追求するのは当然だ」
昨年10月、北朝鮮の核実験後、日本で核保有論が頭をもち上げてきた。
最大の利点は、日本が自前で圧倒的な報復能力を持ち、抑止力が高まることだ。
「核保有=大国」として国際社会ににらみをきかせ、外交力が増すだろう。
米国で、「日本が核保有を目指せば、中国は日本を止めるため、北朝鮮に本気で核放棄を迫る」と、論じるコラムニストもいる。
それでは、日本が核を保有することによるデメリットは何でしょうか?
1995年、防衛庁が作成した秘密報告書によれば、「最悪のケース」として…
- 日米同盟が破たんする
- 国際社会における、核拡散体制が崩壊する
- 周辺諸国が競って核武装に走る
- 国際社会から孤立し、政治・経済・外交すべての面で、国家の存立にかかわる危機におちいる。
仮に日本国民が、日米安保条約を破棄し、国際世論を無視して自主防衛を選択したとしたら、どうなるか…
- 年間約4兆8千億円の防衛費は、2倍以上に跳ね上がる。
- 韓国、台湾などへの「核保有ドミノ」が起こり、北東アジア全体が一気に不安定な状態に陥る。
- 核拡散防止条約機構からの脱退を余儀なくされ、国際社会から孤立する。
- 制裁措置として、ウラン輸入が遮断され、日本の電力の約3割を
供給している、国内55基の原子力発電所は、早晩稼動できなくなる。 - 並行して、石油の供給(99%輸入に頼っている)が遮断され、貿易立国日本経済は壊滅する。
- 貿易や海外資産の凍結、人的交流の停止など、昨年10月、国連安保理で日本が主導した制裁決議と同じ理由で、 日本が制裁を受けることになる。
3/21読売新聞「核の脅威」より