■ことば遊び 小話「文鳥」
お城へ出入りの商人が、隣国中国の文鳥を手に入れました。全部で6羽。
大変珍しいので、お殿様に献上することになりました。ところがお殿様、とても縁起をかつぐお方。めでたい数でないと、お喜びになられません。
「まずいな。七・五・三のどれかでないと、まずい…」。いくら数えても、6羽しかいません。商人は思案の末、「ええ、ままよ!」と、 日本の文鳥を一羽まぜ、七羽にして殿様に献上しました。
「おお、これは珍しい」。殿様は大変ごきげんで、一羽一羽大変な可愛がりよう。
数週間後に呼び出され、「はて、中国の文鳥と申しながら、日本の文鳥が混じっておるぞ。どうしたことじゃ…」。商人は返事ができず、
震えておりました。
すると、日本の文鳥が小さな口を開けて申しました。
「お殿様、私は通訳にございます…」
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 157】
~ことば遊び~
「落語・松竹梅/つづき」
毎年正月は、おめでたい噺を取り上げている。今年は「松竹梅」という、名前だけめでたい?落語のさわりを一席。今日は、 その続きです。
♪ …で、明日の結婚式に備えて、泊り込みで練習を始めた。
念には念を入れて…ってなわけで、とにかく3人は、何度も何度も繰り返し練習して…もう、寝言に出るほど練習した。
烏カァで夜が明けて…
「本日はお日柄もよく、皆様お集まりいただき、誠にありがとうございました」
当たり障りのない祝辞のほうは、松さんの力で、なんとか無事に終わりやして…
式次第もつつがなく、行なわれたまではいいんですがな…。
ところが梅三郎、ものすごい上がり症でしてな。これがただの上がり症じゃねェ…
さんざん練習したというのに、本番になると、パンとセリフがわかんなくなってしまいやして…。
どうしよう、どうしようと考えれば考えるほど、ドッポにはまるんですな…。
それでも、ご祝儀の時間は刻々と迫って来やすから、ますます錯乱状態に陥りやして…。
松「え~、最後にご祝儀を行います。なったなった蛇になった…当家の婿殿、
蛇になった」
竹「何蛇にな~られた?」
梅「大蛇にな~られた」
松太郎、耳打ちして、「おいおい…、そうじゃないでしょう…」
梅「あッ 間違えてたか…あ~あ~、間違えてた…もう一回やってくれ…」
松「では、もう一度…。なったなった蛇になった…当家の婿殿、蛇になった」
竹「何蛇にな~られた?」
梅「亡者にな~られた…?」
もう収拾がつきませんな…。これ以上やったらどんな悪いことになるか、ってェんで、松も竹吉も「…はい、ここでお開きで~す」 って、言わざるを得なくなりやして…。言うか言わないうちに、身支度を整えるのもそこそこに、そそくさと、2人は帰ってしまいやした。
こうして、最悪のところでお開きになってしまったんですが、式も終わっているのに、気づかない梅三郎。ブツブツと続けやす…。
「え? これで違うのか?…待てよ…なったなった蛇になった…当家の婿殿、蛇になった…だろ?…で、何蛇にな~られた?…
炊飯ジャーにな~られた…なんか違うな…」
最初のうちは、こんなのはまだ奥ゆかしかったのですが…。
「あれ? 変だな…なったなった蛇になった…当家の婿殿、蛇になった…
何蛇にな~られた?…カルト教の信者にな~られた…
あれ? これもおかしいなァ」
「あ、わかった! なったなった蛇になった…当家の婿殿、蛇になった…
何蛇にな~られた?…重傷患者にな~られた…?
これじゃ来られなくなった仲人と同じようなものだし…」
式が終わったというのに、独り言をブツブツ言ってやして、
こんなこと、式の最中に言ってたら、それこそ袋叩きに合いかねませんですな。
「なったなった蛇になった…当家の婿殿、蛇になった… 何蛇にな~られた?…
長者にな~られた…」
やっとのことで正解が出た頃には、あたりはもう真っ暗で…」
「え? 誰も聞いていないの?」と、そこへやって来た警備員さんが一言、
「あの…もう、式場、閉めたいんだけど…」