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「昔は皆、自前の"はし箱"を持っていた」

◆ある零細企業の挑戦
河内長野は爪楊枝の国内生産地。 ところが安い中国産に押されて
産地は壊滅。強い相手と同じ土俵で戦っていては勝ち目はない。
将来が見えないまま、ほとんどが廃業してしまった。

そんな中、しぶとく生き残っている工場がある。
自分たちの会社には、長年培った"技術"があるじゃないか…。
生き残る道はないかと、必死に考えた。
「新しい市場」を求め、「新しい商品」を模索する苦闘の日々…。

ついに、歯の治療が目的の「高級三角楊枝」を発案。
商品化に成功した。歯科医業界は新しい市場、競争相手がいない。
そこに自社の新しい商品を売り込んだ。
新商品の楊枝は一本2円20銭、中国産爪楊枝は20銭。
11本分に相当する。

 

【吉村外喜雄のなんだかんだ  - 143】
「昔は皆、自前の"はし箱"を持っていた」

今年の春、小池環境相は、昨年のクールビズ成功?に気をよくして、
"風呂敷"の利便性を国民に提唱した。

ジャスコでは、レジ袋に詰め替えずに、自前の「マイバスケット」の普及を
呼びかけている。近所の生協でも、レジの袋を使わずに「マイバック」の持参を
促すようになり、私も車にマイバックを常備している。

マスコミの報道でご存知でしょうが、コンビニ弁当についている割りばしが、
有料になるかもしれない…。日本の割りばしの消費量は、年間二百五十億本。
90%が中国からの輸入。その中国製割りばしの値上げが原因という。

理由は「原木の高騰」。昨年中国は、50%の値上げを一方的に通告してきた。
更に追い討ちをかけるように、中国政府は今年の3月、「森林保護・環境保護」
を理由に生産を制限し、何れ輸出そのものを禁止すると言ってきた。

中国には、割りばしを使う習慣がない。「人件費が安いから」と、目先の単純な
動機で、中国に製造機械を持ち込み、ノウハウを教えた日本の産地企業。
技術ノウハウを、そっくり中国に持っていかれてしまった。

国内の割りばしの生産地は、奈良と北海道。高級品主体の奈良は、今も命脈を
保っている。が、中国産と競合した北海道は、競争に勝てず、85年当時約70社、
1900人就業していた生産地が、04年現在8社40人にまで激減、壊滅してし
まった。
外食業界は、今後の対応を模索している…。
全国に760店舗の居酒屋を展開し、年間1500万本消費する"海鮮マルシェ"
は、対応策として、全店2月からプラスチック箸に切り替えた。
発想は良かったが、箸を洗うコストや、箸袋に詰める手間が余分にかかる…。

そこで「自前の箸の持参」をお客様に呼びかけ、「マイ箸割引サービス」を始めた。
箸を持参したお客様に50円のポイントを差し上げ、10ポイント貯まったら、
500円分の飲食をサービスする。
更に、お客様から頂いた50円を、自然環境保護団体に寄付することにした。

この会社では、お客様だけでなく、社員さんも自分の箸を持ち込むよう徹底…。
携帯ストラップのように、社員が思い思いに、一言自慢したくなる、
意味ありの箸を持参するようになった。環境保護への意識も高まってきた。
マルシェは、"マイ箸"へこだわる社員を見て、「これはビジネスになる!」と、
「お箸の専門店」を計画しているという。

割りばし同様、産地衰退の道をたどったのが「爪楊枝業界」。
生産地は大阪河内長野。つい最近まで、日本のシェアーの70%を押さえてい
た。割りばし同様、中国に機械を持ち込んで技術を教えたのは、河内で一番の
製造業者。
同業者の反対に合い、組合を脱退してまで、中国に工場を作った。
ところが三年もせずして真似され、生産地、河内長野は壊滅。残っている
工場はわずか数軒。

今は忘れているが、昔は皆"自前の箸箱"を持っていた。
会社や学校では、自前の箸で食事をした。
そこで、外へ食事に出かける時、自前の箸を持ち歩いてはどうだろう…。
食品スーパへ「マイバック」を持参するように、そんなささやかな行為も、
みんなでやれば、温暖化防止と、資源保護の一助になる…。

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