■じゃんけん文明論
何事にも勝敗をハッキリさせようとするのが西洋の文化。
コインを投げて、「表・裏」で勝ち負けを決める。「二項対立の思考」である。
一方、日本、韓国、中国などの東アジアには、ジャンケンに象徴される
「三すくみ肯定」の思想がある。
例えば、子ども達が何かの順番を決めるとき、欧米人だと、いろんな理屈を
つけて自分を優先させようとする。日本や韓国・中国の東洋人は、ジャンケン
の結果に従う。西洋には、ジャンケンでモノ事を決めるという習慣がない。
調和ではなく、ひたすら「優位性」を競う西洋思想は、現代社会に様々なゆがみ
をもたらす。国際政治の場では、それがしばしば覇権主義となって現れてくる。
一方の東洋は、「融和の精神」を大事にしてきた。中国の兵法書「孫子の兵法」は
「戦わずして勝つ」を、戦いの第一眼に置いている。そこに、東洋の精神が伺える。
法人 4月号より
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 126】
~日本人のアイデンティティ~
「守備範囲の違い」
昔の話になるが、鍵山秀三郎氏が、日本からトイレ掃除のメンバーを引き連れ、はるばるブラジルへ出かけ、公衆トイレを掃除した。
ブラジルに"トイレ掃除の会"が組織されるのを、後押しするためである。
西欧社会では、職業における階級制がはっきりしていて、仕事の範囲が明確、分化している。自分の守備範囲が明らかで、その範囲内でしか働かない。
他人の仕事に余計な口を出さないし、手助けすることもない。
地元の新聞は、はるばる日本からやって来て、トイレ掃除をしている人たちを写真入りで記事にした。賞賛しているのではない。どうして社長さん達が便所掃除をするのか? 理解に苦しむのです…
ブラジルでは、トイレ掃除は階級の低い人たちがする…。不可解極まりない。
貧しい人たちの仕事を奪うつもりか? そんな驚きの意味が込められていた。
以下、曽野綾子「透明な歳月の光」からの抜粋です…
外国に旅行すると、時折はっとする面白いことがある。 店員は呼ばなければ来てくれないのが普通。多くの場合、呼ぼうとしても、視線を逸らせ、気付かない振りをする。「韓国人も、日本人みたいなところがある…。察して、先回りしてサービスする」、そんな気配りができるのです。 パリのホテルで、ポーターに「部屋の読書灯がつかないんですけど…」と言ったら、「それは私の仕事ではない、ハウス・キーピングを呼んでください」との答えが返ってきた。 |
アジア系の航空会社の客室乗務員も同様である。今年の一月、女子ゴルフ世界選手権が南アフリカで開かれ、藍ちゃんとさくらちゃんが、日本代表で出かけた。その時、ゴルフバックが中継地の香港に取り残されるというハプニングが起きて、出鼻をくじかれた。それが原因なのか?結果は散々だった。
私(吉村)も、ニューヨークを経由してフロリダへ、飛行機を乗り継いだ時、空港にトランクが取り残されるというトラブルに見舞われた。日本ではあり得ないことです。
「どうしてですか」と尋ねたら、「荷物を扱う人が、自分の守備範囲さえちゃんとしていれば、あとは無関心。目配りしないからですよ…」との答え。
手違いで、変な場所にスーツケースが一つ取り残されていたりすると、日本なら、付けられている荷札を見て、自分の受け持ち外の、他の航空会社の荷物であっても、本来のルートに乗せるよう手配りするだろう。それくらいの親切は当たり前のことである。
外国の人は口を揃え「日本人は親切だ」と言う。日本人は、無意識にやっていて、案外親切行為と思っていないのかも…
こんなことをテーマにしていて、ふと、プロジェクトXに共通性があることに気づく。日本人のチームワークの良さと応用力である。世界一だろう。
仕事の範囲に垣根がない。良いと思ったら、自分の受け持ちであろうが、なかろうが、気軽にやってしまう。
一般社員に混じって、経営のトップがトイレ掃除をする。これこそ、日本人が誇りにして善いことであり、日本人が持つ、日本人独特の優しさではないでしょうか…。