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落語・しわい屋

■「ケチ」と「倹約」は混同されやすい
必要以上に金銭や品物を惜しむことを、「ケチ」という。
無駄使いをせず、お金を生かして、大切に使うことを「倹約」という。

昔、私の父親、同じ町内の商店主とちょくちょく、喫茶店でお茶を飲んだ。
ところが、ただの一度も連れは「今日は、私が…」と言って、財布を出した
ことがない。レジで払うのはいつも父。連れは「ごっつォさん」と言うだけで、
お金を払ったことがないという。
「あんなドケチな男はいない…」と、父が愚痴っていたのを思い出す。

このような人は心が貧しい…? だから誰も付き合おうとしない。
人間関係も乏しくなる。結果、世間にうとくなり、ご縁も遠ざかり、
運にも見放され、お金が回ってこなくなる…。
いくらケチって、財布の紐を堅くしても、倹約にはならない!
「風が吹けば、桶屋が儲かる」。ならば「ドケチ男は、お金が貯まらない」


【吉村外喜雄のなんだかんだ  - 125】
~ことば遊び~
「落語 しわい屋」

今日は、古典落語の名作、どケチ噺「しわい屋」の一コマ。
♪「しわい屋は 七十五日 早く死ぬ…」、なんてェ川柳がございますが、
居るんですねェ、大変ケチなお方が…。

あるけちな男、うなぎ屋の隣へ引っ越してまいりますと、毎日毎日、
うなぎを焼く匂いを嗅ぎまして、「クンクン、ああ~いい匂いだ」なんてんで、
この匂いをおかずに、ご飯を食べておりますと、月末になりまして、
うなぎ屋の主人が、隣に住んでいる男に勘定書を付き付けた…。

「毎日においをかがせてやっているんだから、さあ代金を払ってもらおうか」
『えエッ、勘定を取りに来たって…、あたしは匂いを嗅いでいるだけだよ、
  なんだい、この勘定書は…』
なんてんで、勘定書きを見ますと、「うなぎの嗅ぎ代、六百文」とあります。

隣の男、突然の無理難題に慌てず騒がず、懐から銭を取り出して、
手の中で、ジャラジャラ音を立てました。
「ほれ、においのかぎ賃だ。この銭の音を受け取って、とっとと帰りやがれ!」

翌日往来で薪を一本見つけまして、手を出して拾うのが面倒ってんで、
この…薪をけっとばしまして、ポンスコ、ポンスコ、自分のうちの前までまいり
ましたので、あとひとけり、ポーンとけとばしたら、見当が外れまして、
隣のうなぎ屋のガラス戸にぶつかり、ガラスが二枚ほど割れまして…。

それを見ていたうなぎ屋の主人、「あれ、あの薪一本のために、
ガラスを二枚…」、そのまま「う~ん」なんて、目を回してしまいまして…。
近所の人が驚いて、水を飲ませたり、薬を飲ませたりしましたが、
なかなか息を吹き返しません。するとそこへ、倅が帰ってまいりまして…。

倅の方は、わりかしと落ち着いているんですなァ…。
どうするのかと思って見ていますと、台所へまいりまして、口に水を含みます
と、おとっつぁんの顔めがけて、「ぷっぷっ~っ」と、水をかけまして…。
倅「おとっつぁん、しっかりおし、今の薬はただだよ!」つたら、
「う~ん」と目をさました。

ある日、うなぎ屋が親子で町を歩いておりましたら、
親父の方が足を滑らせまして、川へ落ちてしまいました。
泳げませんので、溺れております。
倅の方は助けたいんですが、これも泳ぎを知りません。通りすがりの人に、

倅「すいません、親父があすこで溺れているんですけど、助けてくれませんか」
男「はあ…、助けないことはありませんけど、助けたらいくらくれます?」
倅「ええ!お金取るんですか…、じゃ二百文だしますよ」

男「たった二百文ですか、三百文だしなさいよ」
倅「いや、いま親父の相場は安いんだ、二百文でお願いしますよ」
男「親父の相場なんて知るか! 三百文出しなよ!」ってぇと、
親父が川の中から、
「倅、二百文で頑張れ、三百出すなら、もぐっちまう…」

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