4~5年前、東洋一の近代都市上海を旅行して、林立する超高層ビルを、田舎者
のように仰ぎ見たのを思いだす…。が、夜の上海は真っ暗。百万ドルの夜景の
香港とは大違い。ネオンも街灯も無く、車のヘッドライトの列も見えず、観光客で
にぎわう旧租界と新租界の一角のみ、照明で照らし出され、まばゆく輝いている。
その極端な落差が印象に残る…!
上海伊勢丹に並べられた商品は日本と同じ。上海の男性の平均月収は、当時
1万3千円くらい。とても庶民の手には入らない。
上海の人口は1750万人(東京1260万人)。「市民の2%、約35万人の裕福な
お客さまに来ていただければ、それでいいのです…」とは、支配人の弁。
日用雑貨の国際見本市を見学した。あらゆる商品が並べられ、東京の見本市と
遜色はない。ところが、街に目を向けると、お化粧をしたオシャレな女性は皆無。
日本でいえば、昭和30年代に近い…。町並みや庶民の暮らし、この4~5年で
どのように変わっただろうか? 現在の上海を見てみたいものだ。
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 123】
「知られていない 本当の中国」
友人のM社長が、北陸大学「孔子学院」の開校に参列した。その記念講演で、
中華人民共和国駐日大使"王 毅"氏が、「中国の進む道とアジアの未来」と
題して話をした。M氏は、講演の内容をA4、7ページにまとめ、メールで送っ
てきた。
内容は、中国政府が今後どのような考え方で、自国を発展させ、世界の一員と
して、諸外国と関わっていくかが示されている。話している内容は素晴らしい。
しかし、日本と中国がギクシャクしている本音のところは、語っていない。
そこで、中国には中国なりの国内事情があることを、題材にしたいと思う。
読売新聞 中国総局長・藤野彰氏が「ワールド・ビュー」で、現在の中国の本当
の姿を語っている。
「庶民は共産党を憎んでいる。心底憎んでいる。共産党以外の政党が許された
ら、俺も参加するよ」。党員暦三十年の知人がツバを飛ばさんばかりの勢いで
毒ずく…。
今の中国は社会主義ではなく"官僚資本主義"。高級幹部が病気になれば、国
が全部面倒みてくれる。金のない庶民がガンになったら、死ぬのを待つだけだ。
「社会の不公正は許し難い!」と、知人は批判する。
特権とは無縁の、ヒラ党員の知人と政治談議すると、よくこんな話になる。
彼に限らず庶民のレベルでは、党を腐す声は耳にしても、ほめ言葉などまず
聞かれない。党を取り巻く冷え冷えとした空気を実感するのです。
「中国脅威論」が国際的に取りざたされるようになって久しい。
ある者は「驚異的経済成長」を憂え、別の者は「急速な軍備増強」に警鐘を鳴らす。
民主党の前原前代表の発言にもあるように、日本国内でもかまびすしい。
しかし、15億中国の真の「脅威」は、党の威信が地に落ちるなか…、
独裁体制がシロアリの巣くう家のように、内側から溶解していくのではないか…
、その過程で、どれだけの混乱が生じるか、という不透明感にこそ、内在している。
体制のほころびは、既に幾多の悲惨な現実となって露呈している。
近年、中国では農民暴動、炭鉱災害、環境汚染(工場からのダイオキシン河川
流出事件)など、異常な重大事件が続発しているが、それらには共通の要因が
ある。
利権体質、官僚主義に象徴される政治・行政の腐敗と非民主性。
そして国民を軽んじて恥じない、権力者たちのおごり…である。
国民は社会の不公平に不満を募らせ、所得分配の不平等は、所得格差が著しい
中南米の諸国よりも、さらに深刻である。
社会矛盾に対する国民の不満は、常にはけ口を求め、暴発を繰り返す。
現政権は、単発の暴動や騒動は力ずくで押さえ込めるが、連鎖的発生を断ち切
る能力はない。人心が政府から離反するのと比例するように、党の支配力は
低下しつつある。
改革開放から四半世紀、市場経済を推し進めたこの十数年間、民主化の要求を
抑圧し、農民ら弱者を切り捨ててきた「開発独裁型政治」のツケが、いま回って
きている。
大国の威信を誇示する中国。だが、仮面の下の素顔は「出口の見えない混迷」
に震えている…。
そこで中国政府は、国民の不満を逸らし、中国の国威を発揮するには格好の、
2008年夏季オリンピック北京誘致に成功した。
2001年、IOCの投票で決定したのだが、中国が抱える「人権問題」や、国民
のスポーツ観戦のマナーの悪さを懸念する諸外国も多い。
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