五大将軍徳川綱吉の「生類あわれみの令」は、蚊をつぶした小姓が遠島、ツバメを
吹き矢で殺した子供が死罪、といった伝えが残り、悪政の象徴のように言われている。
この法の狙いには、戦国時代以来続いてきた、人殺しをいとわぬ風潮を、厳罰で
もって変えてしまおうという、綱吉の思惑があったとされる。
武断主義から文治主義の時代に変わろうとするときに、生まれた法律です。
織田信長にも「一銭斬り」がある。略奪横行の絶えない、乱れた世の中の治安を
回復するため、たとえ一銭でも人の金品を盗れば、斬首で臨んだ。
郵政民営化の反対派に"刺客"を送った小泉首相。「覆水盆に返る」的自民党の
甘え体質を改革するために、思い切った手法が必要との判断があったのでしょう。
8/29北国新聞「時鐘」
【心と体の健康情報 - 214】
~古典から学ぶ~
「韓非子/人間は利に動かされる動物」
※韓非子…二千年前、中国戦国時代末期、韓の国の法家"韓非"の書物。
韓非は「性悪説」を唱えた荀子(じゅんし)の弟子。秦に招かれ、秦王政(後の
始皇帝)に認められ、用いられようとしたが、荀子のもとで共に学んだ秦の
重臣"奇斯"に妬まれ、毒殺された。
韓非は、「本来悪である人間の性を矯正するには、"法"を用いてなす」と説いた。
秦の始皇帝が韓非亡き後、国家運営の理論的支柱にしたことで知られている。
帝王学を学ぶ上で、西の「マキャベリ」と並び称される、東の「韓非子」。
「人間とは"利"に動かされる動物である」という基本認識に立って、
冷酷なま
でに即物的なリーダー論を展開する。
韓非子では、徹底した人間不信の上に立って、リーダーの在りかたを追求して
いる。リーダーたるもの、一度は目を通しておきたい古典でしょう。
組織のトップ、リーダーはどうあるべきか。自らの地位を安泰にするためには、
どんな点に配慮しなければならないか。そういった問題を、韓非子の独特の
人間観でもって追及している。
「人間を動かしているものは何か? 愛情でもない、思いやりでもない、義理で
もない、人情でもない、ただ一つ"利益"である。人間は、
利益によって動く動物
である」。これが韓非子の認識である。
"韓非"は、次のように語っている。
「ウナギは蛇に似ており、蚕はイモ虫に似ている。蛇を見れば、誰でもビクッ
とするし、イモ虫を見れば誰でもゾッとする。だが、漁師は手でウナギを握る
し、女は手で蚕をつまむ。つまり、利益になると見れば誰でも勇者になるのだ」
また、こうも語っている。
「車をつくる職人は、人は皆金持ちになればよいと思っている。棺桶をつくる
職人は、人は皆早く死ねばよいと思っている。しかし、前者が善人で、後者が
悪人だというわけではない」
「金持ちにならなければ、車を買ってくれないし、死ななければ棺桶が売れな
いだけのことだ。人が憎いのではなく、人が死ねば自分が利益を得るからであ
る」
こういった考え方には、賛否いろいろある。少なくとも、人間社会のある一面
・真実を、鋭く言い当てていることは否めません。人間関係が利益によって
動かされているとするなら、トップと部下の関係も、決して例外ではないと、
韓非は考えるのです。
「部下は、常に自分の利益を優先して考える。折あらばトップに取り入って、
自分の利益を拡大し、スキあらばトップを蹴落として、自分がその座に
取って代わろうとする。油断もスキも許されないのが、トップの地位である」
と、韓非子は言っている。
PHP「リーダーのための中国古典・韓非子」より