首相公選の時が来た
叱られるかもしれないが、今回の解散総選挙ほど面白い選挙はない。
ここへ来て、政治の世界に新たな変革の兆しが出はじめたようです。
1980年、大平正芳の時の「ハプニング解散」は、自民党内の対立から。
社会党が出した内閣不信任案に、反主流派の福田、三木氏など69人が欠席。
可決解散。この一つ前の選挙の「消費税導入」で、自民党が大敗したことが発端。
90年代、宮沢喜一の「政治改革解散」がある。この時「小選挙区制導入」をめぐり、
中選挙区制維持を訴える党内勢力が強く、羽田、小沢氏ら39人が内閣不信任案
賛成に回り、解散。自民党は分裂。羽田氏を中心に44人が「新政党」を結成、
武村氏ら10人は「新党さきがけ」を旗揚げした。今とよく似た情勢です。
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 92】
「首相公選の時が来た」
今回の解散選挙、それぞれ、思うところがあると思います。日頃私が思ってい
ることに近いことを書いている新聞記事があるので、読んでみてください。
■8/23読売新聞 田中明彦「論壇思潮/首相公選の時が来た」より
小泉一郎が総理大臣になっていなければ、今回の衆議院選挙はなかっただろう。
小選挙区制度が定着した今回の選挙。ほとんどの選挙区は、自民と民主の一騎
打ち。勝った方の政党から首相が出る。小泉さんを信任するか、岡田さんに政権
を委ねるかが争点となる。
ということは、今回の選挙は、"日本で初めて、国民の一票で重要法案の信任
決定という、滅多にない"首相公選選挙"の機会を、有権者に与えたことになる。
とすれば、政権を担っている小泉首相にしてみれば、すべての選挙区で、自分の
代理として選挙を戦ってくれる候補者が必要になるのは、当然だろう。
郵政民営化こそが自分への信任・不信任を分けると言っている小泉首相にとって
、法案に反対し、党議決定に背いた候補を、自分の代理とするわけにはいかない。
故に、郵政民営化に反対した候補者の選挙区に、賛成候補が立つのを、「刺客」
と騒ぐのは見当違い…。
小選挙区制は、政権を担う二大政党がねらい。政党間の一対一の戦いとなる。
当然、国民の選択は「マニュファスト」。政党が掲げる政策を見て、一票を投じよ
うとする。
党本部が選挙に勝つために、強力な落下傘候補を敵陣に送り込む、今回の新し
い手法、興味津々である。自民党から30数名の離反者が出たことで、新人にも
チャンスが訪れた。自民党が立候補者を全国に公募したところ、八百名もの自
薦・他薦があったという。
■8/24中日新聞 斉藤学「本音のコラム/国民の判断」より
小泉首相が任期中に果たした公約は、皮肉にも、何事も派閥主導で党内をまと
めてきた旧来型の自民党を、ぶっ潰したことにある。
委員会採決し、政府決定した重要法案に、あくまでも反対する党員が多数出る
騒ぎになったのは、小選挙区制によって、派閥の力が弱まり、タガが外れて、締
め付けがきかなくなったことによる。
村山内閣成立以来、歴代の首相指名の手続きは、国民不在の派閥総領の話し
合いの中で為されてきた。首相候補の中で最も人気がない小渕さんが首相に
なつた頃は、絶望が支配した。彼の急死後、派閥のボス数名が密室で談合し、
仲間の一人、森さんを首相に担ぎ出した。その瞬間、自民党は国民から見放さ
れた。彼らはやり過ぎたのだ。
この瀕死の中、最大派閥の信任を受けず、国民の人気をバックに、小泉首相が
誕生した。そして、郵政民営化騒動。派閥間の融和を何より優先してきた自民
党にあって、党首のリーダーシップが、今ほど全面に押し出されたことはない。
ヒトラーごとき独裁者と反発し、反旗をひるがえす族議員が出るのは必然のこ
と。
一方、政権を取るためと、郵政問題には目を反らし、選挙向けの都合の良い政
策を並べて、国民におもねり、与党の内紛・失点に乗じようとする、何でも反対
の民主党。万年野党に甘んじた、一昔前の社会党と何ら変わらない。
小さな政府と構造改革を推し進めるには、郵政民営化もまた避けて通れない問
題…。世の中が大きく変化していく中、これからの日本を正しい方向に導く政党
・政治家は誰か?しっかりとした目で一票を投じ、首相を選ばなければならない。