■ことば遊び「豆富」
親戚へのお中元に取り寄せ、大変喜ばれた「安心堂白雪姫」のお豆腐。
大阪堺
市のお豆腐屋さんである。経営者の橋本さんは、その昔、芝寿しで工場長をして
いた人。今では、美味しいお豆腐屋さんとして、関西一円其の名が知られている。
社長さんのこだわりは、日本一美味しい豆腐をつくること。もう一つ、豆腐の”腐”
は”富”、つまり”豆富”にこだわる。”豆に富んでいる”
美味しい食べ物をつくって
いるという自負がある。橋本さんの豆富に懸ける思いが伝わってくる。
決して、ダジャレなどではない。
「暮らしのことば 語源辞典」(講談社)によれば、”豆腐”は中国の漢語。
漢字の”腐”は、本来の意味「腐る」の他に、固体でも液体でもないようなものを
指すときに用いる。(例…乳腐=ヨーグルト)
中国語の”腐”には、「柔らかい」とか「凝固させる」という意味もある。
が、日本語の”腐”には「くさる」の意味しかない。だから「豆を腐らせて豆腐を
作っているのではない」と、”腐る”という字を避けたくなるのが、お豆腐屋さん
の心情でしょう。
【吉村外喜雄のなんだかんだ - 87】
~日本人のアイデンティティー~
「欧米人が奇妙に思うこと」
お中元のシーズン。「つまらない物ですが…」と謙遜してお届けするのが、日本の
習慣。ところがこの言い回し、近頃の若い人達にはなじめない。
アメリカでは、「最高に喜んでいただけると思って選びました!」と言って渡す。
貰った人は、満面笑みを浮かべて、目の前で包装紙をビリビリと破く。日本では、
お中元をお届けして、目の前でビリビリ破られたら、失礼になってしまう。
折角、最高の物と思ってお届けするのに、何で「つまらない物」と言うのだろうか。
「そんなつまらない物だったら、持って来なければいいのに…」って、若い人たち
は思う。「いいものはいいと言った方がいいじゃない!」と、この謙遜した言い回
しを嫌がる。
この違いは、アメリカ人は「物」をプレゼントし、日本人は
「心」をお届けしよう
とするところからきている。ですから、「つまらない物ですが…」を正しく言うと、
「あなたに最高の物をと思ってお選びし、お届けに上がりましたが、受け取って
いただくあなたには、つまらない物かもしれませんよね…」となる。
新渡戸稲造「武士道」より
日本を代表する食文化に「天ぷら」や「すき焼き」がある。でも、「おそば」はそれ
以上だろう。食欲の落ちた夏場の「ざるそば」、”たれ”に漬けたおそばを一気に
すすり上げる美味しさは、こたえられない。
この「ズズ…、ズズッ」て音を立てて一気に”すする”食べ方は、日本人独特のもの。
日本人にしかない食習慣であり、日本人の食文化なのです。
一方、西欧社会では、このように人前で「ズズッ」って”すする”のは、食事のマナー
では最悪の食べ方。ところが、日本人はスープを飲むとき、つい「ズズッ」って音を
立ててしまう。無意識に”すすってしまう”のです。
パリの高級レストラン。日本人の団体が入ってくると、1番端っこの、他のお客様
の迷惑にならない所へ、ご案内するそうです。
外国から入ってきた文化で、日頃私たちがなにげなく、ごく当たり前にやってい
ることが、外国人からみたら奇妙に見えることが、他にもいろいろあるようです。
幾つか紹介しますが、「へぇ~」と驚かれるかも…
デパートのハンカチ売り場は、可愛いハンカチを求める若い女性であふれる。
自分のだけでなく、ボーイフレンドや誕生祝いの贈り物にしようと物色している。
このハンカチ、欧米では鼻をかむためのもので、年寄りしか持ち歩かない。
若い人はハンカチを持ち歩く習慣かないので、プレゼントされても嬉しくない。
で、バーバリーのハンカチは、日本人のために作られ、売られているという。
日本では、腕を組んで歩く若いカップルをよく目にする。欧米では、若いカップル
が腕を組むことはない。腕を組んで歩くのは主に老夫婦で、若い人は、手をつな
いで歩く。(気がつかなかった…)
日本人は、美しい女性を見かけると、初対面でも「可愛い」「きれい」と気軽に声
を掛ける男性が多い。(仕事がら、私は挨拶代わりによく言う…)
欧米では、初対面の人に「可愛い」とか「きれい」とか声を掛ける男性はいない。
いるとしたら、イタリアの男性ぐらいかも…。ナンパしているように見られるから…。