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ヨン様によろめく中年女性

今週の火曜日、厚生年金会館で、ドイツの名門バレエ団による「カルメン&ボレロ」の公演を鑑賞した。
私の大好きなビゼーのオペラ「カルメン」と、ラベルの名曲「ボレロ」を振り付けした二幕の舞台。 世界一流のバレエ団とアンサンブル金沢の演奏が一体をなし、見ている観客を魅了する。
最上級のフランス料理を堪能したような、何ともいえない味わいのあるひと時だった。
先週の日曜日には、金沢を舞台にした秋吉久美子主演の「透光の樹」を鑑賞したり、ニューヨーク・ ミュージシャンのジャズ演奏を聴きに行ったりと、ここ最近、夫婦で出かける機会が多くなった。
妻とは趣味が一致せず、一緒に出かけるのはショッピングのお供か、旅行ぐらいだったのに、嬉しい限りです。

吉村外喜雄のなんだかんだ 第59号
「ヨン様によろめく中年女性」

私の会社は、40代の女性を中心にした化粧品販売の会社。今年の韓流ブーム、避けては通れない。「冬のソナタ」 が引き金となって、「ホテリアー」「美しき日々」など、韓国ドラマが大当たり。

テレビはよく見る。が、昼メロは無論のこと、夜の時間帯の恋愛ドラマを見ることは久しくなかった。今年の八月、 夜中の二時からのオリンピック、体操やマラソンを見たくて、それまでの時間つぶしにと、ダビングした「冬のソナタ」 を見始めた。
それがきっかけで、見るたびに次週が待ち遠しくなってくる。いつしか、韓国ドラマの面白さにハマっていった。
で、この冬の当社の販促キャンペーンの目玉は、「優績代理店様、韓国・冬ソナロケ地ご招待」なのです。

日本の中年女性のヨン様フィーバーは、ロイター通信などを通して全世界に報道された。異常としか言いようがない。 四・五十代のいい年をした女性が嬌声を挙げて、ホテルから出てきたヨン様に突進していく姿。あきれてモノが言えない。
感極まって泣き出すおばさんもいる。男性から見て、これほどバカバカしい現象はない。
衣食住満ち足りた何不自由のない毎日。何時間も前から場所取りをして、ヨン様を人目見ようと、目を輝かせ、 今か今かと小娘のように胸をときめかせて、現われるのを待つ。
ブランド品を身にまとい、経済的にも満ち足りた中年の女性たちが画面に映る。
何不自由ない毎日。それでも欲求不満がたまって、もがいているのでしょうか? 
今の生活には胸をときめかす対象もなく、毎日が退屈なのでしょう。

何かに熱狂したい。「玉(三郎)様」「杉(良太郎)様」などに熱狂する中年女性。
「マツケンサンバ」「氷川きよし」も悪くはない。が、東京へ会いに行くほどではない、金沢に住むものにとって、 何れも遠い存在である。そこへ、更に甘くてソフトな「ヨン様」が、身近なお茶の間に飛び込んできた。

「ああ~ 彼なら安心してよろめくことができる…。胸がときめく。たとえ妄想のなかででも、 若く美しい男に愛されて、抱かれて、うっとりしたい…」
ドラマの中のヨン様に、若かりし頃の想いを重ね、いつしか憧れとなって、胸をキュンとときめかせてしまうのでしょう。 日本中、ヨン様ウイルスに侵されてしまったよう…。
欲求不満がたまったり、ストレスを感じた時、女性が男性を癒す役割は大きい。
ところが、女性の心を癒してくれる男性は…?、今の日本では望むべくもない。
ほとんどの女性タレントが男性の心を癒してくれるのに、男性では、ノーベル賞を受賞した田中耕一さんと、 塩爺ぐらいだという。
「身近な男性に求められない癒しを、彼に求めたのではないだろうか」と、東京学芸大学の村松泰子教授は分析する。

12/7 北國新聞と北陸中日新聞から一部抜粋しています

面白いのは、レポーターのインタビューに応えて、「今日帰ったら、主人に見たことすべて話さなくちゃ…」 と興奮ぎみ。決してご主人に幻滅を感じて、ヨン様を追い求めているのではない。平凡だが幸せ。家庭を大切に守っている、 どこにでもいる主婦が癒される、ほんのひと時なのです。

どのテレビ局も、争うようにヨン様ブームをあおっている。ヨン様が宿泊したホテルの兆豪華な一室が映し出される。 一泊40万円だという。その日にヨン様が食べたのと同じ中華料理、13,650円のフルコースが用意されている。
一泊四名様相部屋で受付たところ、申込みが殺到しているという。世界広しといえども、 これほど平和な国は他にないでしょう。

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