11月17日は、プロ野球のドラフト会議でした。フレッシュな新人がプロの世界に夢をふくらませる。その姿がすがすがしい。
そしてその日の夜、今年の初物、フランスワイン「ボージョレ・ヌーボ」がフレッシュに登場。
18日解禁を祝って、午前零時のカウントダウンパーティが、金沢市内のホテルや酒場で開かれた。
私達夫婦も初めて参加した。十・九・八・…の合唱の後、クラッカーが鳴らされ、樽酒が開かれ振舞われる。その後、
各テーブルに配られたビン詰めボージョレも味わった。が、樽の方が明らかに舌にまろやかで、味わい深かった。
生ビールとビンビールの違いのよう…。
ジャズ歌手の歌と生演奏を聴きながらの、ここちよいひと時でした。
【吉村外喜雄のなんだかんだ 第56号】
「不利な条件を逆手に取って成功した
ボージョレ・ヌーボの販売戦略」
私は日本酒よりワインや焼酎が好きである。ワイングラスに上等のワインを注いで、その雰囲気、香り、色を楽しむ。
そして舌の上でころがして、より深みのある味わいを楽しむ。
ボージョレ・ヌーボは、さわやかで飲みやすい一方、深みや重みがないと言われる。ところが、
一昨年の輸入量は740万本。今年は1000万本を超えようとしている。日本は最大の輸入国である。その成功の陰には、
ビジネスのお手本になるような、販売上の知恵と工夫があることを知らねばならない。
ボージョレ地区のブドウは、土壌や気候の関係で、長期熟成に向かないものが多く、高級ワインにはなりにくい。
一方で、早熟でさわやかという特徴がある。
そういった短所を長所に変えていく、商品及び市場戦略が功を奏し、特別な「新酒」として、
世界的人気を博するようになった。
品質を保つために始まったとされる解禁日も、消費者をじらし、期待感や渇望観が高まったところで、
世界一斉に販売するという、効果的商法に結びつけている。
これが、イベント性を高め、季節の代名詞になる地位の確立につながったのです。
解禁日に、酒店やレストランに一斉に張り出されるポスターの「ボージョレ・ヌーボ到着!」は、簡単にして明解。
広告の名文句となっている。日頃ワインに馴染みの薄い人まで、「そうか、飲まなくては…」という気にさせるのです。
日本酒もよく似たことをやっている。解禁日は無いにしても、「地域限定」「生産量限定」「一番絞り」
などといった商法で消費者にアピールし、販売量を伸ばそうとしている。
成功の陰には、その他にも幾つかの隠れた苦労がある。世界一斉販売は、
短期間に世界中に配送できる物流網が整備されたお陰。
また、日本で売られるボージョレの瓶は無色透明。一般に、光の影響を防ぐため色付きの瓶が普通。日本では、
色付きの瓶は再利用がむずかしい。
そこで「すぐに飲んでしまう新酒なら、光の影響も少ないだろう」と、リサイクルに配慮した瓶を使うようにしたのです。
読売新聞の記事より
伝統やルールを頑固に守りながら、遠い消費地である日本の声に柔軟に対応する姿勢は、見習わなければならない。
「味に比べて高価」「見え透いたお祭り騒ぎ」というさめた声もあるが、厳しい消費不況の中、
財布のひもを緩めさせる巧みな戦略・戦術は、見習うところが多い。
ちなみに、ボージョレ・ヌーボの”ヌーボ”とは、日本語では「新しい」の意味。
だから、「ボージョレ地方の新作ワイン」という意味になる。