9月7日の夜、18号台風の影響で、金沢も40mの強風に見舞われた。そんな日に、金沢の奥座敷湯涌温泉で、 同窓会の懇親をやっていた。台風で飛行機が欠航するかもしれないというのに、東京から二人もやって来た。
翌朝、新聞の一面を見てびっくり。中型トラックが横倒しになり、家屋の屋根がめくれ飛んだ写真が載っていた。 V字形の山間の谷間の温泉町。強風が山の上部を通り過ぎて、風が吹かなかったのです。慌てて会社に電話したりしている。
そこで、江戸川柳を一句。
「子は二階 親父は屋根に 嵐の日」
(
バカ息子は吉原の遊郭の二階に上がって遊び呆けているというのに、家では、親父が屋根に上がって、嵐と悪戦苦闘 )
湯涌温泉は、大正初めにドイツで催された鉱泉博覧会で、泉質の良さから「世界三大名泉」に選ばれている。が、
金沢で知る人は少ない。どこの旅館も、浴場に入ると、源泉がひしゃくで飲めるようになっている。胃潰瘍、外傷、
リューマチなどによく効く。
【吉村外喜雄のなんだかんだ 第48号】
「ニセ温泉騒動」
3~4年前の話になるが、ある日突然、山代温泉で、入浴中に浴槽のお湯を誤って肺に吸い込み、 レジオネラ菌に犯されて死亡したというニュースが、お茶の間に飛び込んできて、 循環型温泉の危険性が大きく報道されたことがある。
15年前、我が家を新築したとき、その問題となった循環型24時間風呂を設置し、毎日好きなときにお風呂に入れると、 重宝していた。事件が起きた時、どうしようかと迷ったが、今もそのまま使い続けている。
人生「上り坂」があれば、「下り坂」がある。 ところで、いつも心しておかなければならないのは、思いもかけない「まさか」 という坂があることです。「まさか」の坂は突然やってくる。そしてうろたえることになる。
レジオネラ菌事件だけでなく、突然の「まさか」に見舞われ、温泉旅館の客足が遠のいた事件が、 ここ十年の間に二度もあった。一つは、1995年1月17日の阪神大震災。その後ようやく客足が戻ってきたと思ったら、 1997年、三国沖のナホトカ号遭難オイル漏れ事件。いずれも北陸の温泉町に大きな打撃となった。
二度あることは三度あった。ところが、またも「まさか」のニュースが、突然お茶の間に飛び込んできた。 ”ニセ温泉騒動” である。発端は7月23日の白骨温泉の入浴剤混入告発。 その後全国の有名温泉に飛び火して、新聞雑誌・テレビの格好の餌食となって、今もまだ報道されている。
白骨温泉は、年間43万人も訪れる全国に名だたる名湯。それだけに、世間に与えたショックは大きい。
石川県はご存知温泉どころ、加賀や能登の温泉町の湯量は大丈夫なのだろうか?今から二十年くらい前、
経済が大きく成長していく中で、温泉地を訪れる団体客を取り込もうと、山代、片山津を始め、全国名だたる温泉旅館は、
我も我もと施設を拡充していった。その頃から、湯量不足がちまたのうわさとなっていたのです。
観光客が増えるからといって、それに比例してお湯の量が増えることはない。
温泉施設が拡張すれば、当然源泉が足らなくなってくる。
新幹線や高速道路などは、何キロにも及ぶトンネル工事がついて回る。
工事によって地下水脈がズタズタになり、近くの温泉が枯渇するといった現象が、全国あちこちで起きている。
地震で源泉が枯れてしまったケースもある。こんなことが一般に知られたら大変です。地元では分かっていても、知らぬふり。
乱開発だけが悪者ではない。地球環境に優しいというふれこみで推し進められた、地熱発電所の開発が原因となって、 枯渇してしまった温泉が、全国に少なからずあるというから、泣くに泣けない。
今回の事件が引き金になって、全国にニセ温泉が100ケ所、インチキ表示温泉が26ケ所も見つかった。芦原温泉では、
四軒が水道や井戸水を使用しながら、温泉と表示していた。単なる井戸水を温泉と称して、客を騙し、
入泉料まで取っていたのは許せない。
それに比べれば、湧き出す温泉の色が乳色でなくなったため、入浴剤を入れて白濁させることくらいは、
許せるような気がするのですが… だめ?!
ところで、先般の和歌山沖地震で、和歌山県の某温泉が白骨温泉とは逆に、今まで透明だったお湯が、
牛乳色の温泉が湧くようになって、旅館は大喜び。
金沢市内も、掘れば温泉が湧き、市内には、ホテル、共同浴場、レジャー施設、ゴルフ場など、
30ケ所くらい温泉が湧いている。直径十キロにも満たない金沢。
場所によって、泉質やお湯の色が違うから面白い。
8/ 29北国新聞の記事ほか