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重圧と戦うイチロー(3)

■イチローのこだわり

イチローもゲンを担ぐ。ダックアウトからグラウンドに上る階段…5段ある。
ヒットが出るようにと、最初の一歩は、必ず"左足"から…数打席ヒットが出ないと、今度は"右足"から上る…。
走塁に賭けるイチロー…特別仕立ての、ものすごく軽いスパイクシューズを履いている。
その分痛みも早く、次々と履き着替えるので、ロッカーはシューズの山…。

イチロー専用の、とても高価な特殊トレーニングマシーンを、球場内のトレーニングルームに備え付けている。
弾力性のある柔らかい筋肉と、しなやかな身体をつくるマシーンで、作動中、全身への酸素の供給をスムーズにし、乳酸の発生を抑えてくれる、 優れものである…。
大リーガーは"体の大きな人"というイメージが強い。イチローに限っては、それはむしろ致命傷になる…肥大させずに、筋力だけアップさせる。
イチロー身体…いつも神経が隅々に行き届いた状態でなければならない。
頭でイメージしたことを即、身体で表現する…それがイチローの武器になる。
身体が肥大したら、イチローがイチローでなくなってしまう…。


【吉村外喜雄のなんだかんだ - 603】
「重圧と戦うイチロー(3)」

2007年、イチローは一つの決意を固める。重圧にただ耐えるのではなく、「正面から重圧と向き合う」。「プレッシャーはかかる。 どうしたってかかる…逃げられない…だから向き合おう」…今年、そこをテーマにした。
「プレッシャーが来たら、そこから逃げない…俺は…」

2006年までは、重圧に耐え切れず、脈が変わり、試合中に気持ち悪くなり、吐き気をもよおし、重圧を家に持ち帰った。 重圧から逃れることで、結果を出してきたのです。メジャーに来て、同じ重圧でも、結果を残すことに集中すればよかった… 重圧に耐えることができたのです。

2007年、重圧を受け入れて、立ち向かって行っても、やれる自信があった。
技術の裏づけが、それを可能にした…ならば、プレッシャーを受け入れるべきだと思った。
重圧を避けて達成した200本と、重圧に向かっていって、常に緊迫した試合で達成する200本とでは、重みが全く違ってくる。

今、イチローは"目には見えない何か?"を掴みかけている。
「ストライクゾーンだけで、もし打つことが出来たら、僕よりヒットを打てる人はいないと思う。ところが、 訳のわからないボールに手を出したり、手を出してはいけないボールに手を出す…それがいけないんです」

イチローは、とんでもない悪球に手を出すことが少なくない。人並み外れた技術と、反射神経を持つがゆえに、悪球でも、 思わず反応してしまうのだ。
重圧がかかれば、よりその制御が効かなくなってくる…。

"これを無くせるんじゃないか"と思うんです。この感覚を得れば、今までの技術なんか必要ない… 無駄な技術を駆使する必要がなくなってくる。
"普通に打てる"って思った球を打ちにいけば、ヒットが出るんです。

自分を制御し、ストライクだけを打つ…その感覚を掴もうとしている。
バッターボックスでしか感じられない…あそこでしか生まれないものがある。
だから厄介なんです。   ~つづく~ 

NHKプロフェッショナル 仕事の流儀から

今シーズン208本、メジャー1800安打達成まで、あと1本というところで、昨日の試合…5打数ノーヒット。
残り4試合で8本打てば、張本勲が持つ日本記録3.085安打に並ぶが、今シーズンの達成は、難しくなってきた。

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