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遊びって大切

動物園の猿山の猿を見ていると、飽きることがない。猿山には一匹のボス猿が
いて、ピラミット状の組織を束ね、にらみを利かせている。猿たちは、仲良く蚤を
取り合ったり、じゃれ合ったり、スキンシップに余念がない。

子猿は遊びを通して、猿社会での秩序を身に付けていく。若いメス猿は、お母さ
ん猿を見て子育てを学習する。ところがまれに、子どもを生んで、我が子を放置
してしまう母猿がいる。
仕方なく飼育係は、生まれたばかりの子猿に哺乳瓶をあてがい、24時間付きっ
きりで、お母さん猿の代役をする。一人歩き出きるようになったら、一日でも早く
野性の群れに戻さなければならない。猿社会に入れてもらえなくなるからです。

群れに解き放たれた子猿。喜び勇んで一目散に群れの中に飛び込み、餌に飛び
つく。ボス猿が飛んできて歯をむき、小猿を群れの外へ追っ払う。子猿は、何とか
群れに入れてもらおうと、群れの周りをうろつくき、近づこうとするが、群れに威嚇
される。仕方なくすごすごと、飼育係のところへ戻ってくる。
群れの序列やルールを、子猿たちの遊びの中で学ばなかったからです。

【心と体の健康情報  - 256】
~子育て心理学~
「遊びって大切」

以下、金大大学院教授 きむらるみこ「自分探しのてがかり」より

有名な幼稚園から進学した小学生。土曜と日曜、午後1時から8時
まで、二日間に14時間も"塾"に行っている。
知人が母親に「大変ですね」と声をかけると、「子どもが勉強しない
で、何をすることがありますか?」との返事…。

このようなやりとりを聞いて、誰も不自然には思わない。このような勉強一本
やりの環境に閉じ込められている子どもが、多いのでないでしょうか?
そうした子ども達、自分が勉強していることの意味を正しく理解して、塾へ通
っているだろうか…?

この母親は、子どもの成長に"遊びが大切"だとは思っていない。
子どもは遊びを通して多くのことを学習します。遊具を通して、仲間と
楽しく遊ぶことで、様々な知恵が付き、心から笑い、ストレスを発散す
ることができます。

私の子どもの頃は、大きい子、小さい子みんな一緒に、一日中路地で遊んだ。
意見や感情がぶつかり合い、よく喧嘩をした。感情を抑えきれず、相手と殴り合っ
たりしたが、「手かげん」することを知っていた。今の若者のように、感情を
抑えきれずに、相手を殴り殺してしまう、などとということにはならなかった。
子どもの間のもめ事…。親に言いつけることもなかったし、親が子どもの喧嘩に、
しゃしゃり出ることもなかった。

そうやって、遊びという集団の中で体験したことが、人との交わり方、距離の
置き方、上下関係など…、遊びを通して、社会性を身に付けていったのです。
近頃は、こうした経験を踏まないまま、親に従順であることがよい子と躾けら
れ、反抗期を経験しないまま、社会人に巣立っていく。

社会に出て初めて、自分とは異なる様々な考え方の人に従わなければならな
いことに戸惑う。そんな時、子どもの頃の体験がものをいう。社会性を身につ
けていないと、人間関係がわずらわしく、問題が解決出来ず、ストレスを抱え
込んでしまう…。
親に尋ねれば、「いい歳をして、そんなことも分からないの…」と一喝されそう。
社会人になって、理由もなく会社を辞め、部屋に閉じこもってしまうのは、
そうした理由からでしょうか…?

「人より勉強が出来ると良い子」といった価値観で育った、彼らの
思考や行動は、物事に対処する方法論がなく、「右か左か」といった
オール・オア・ナッシングの考え方をしようとする。

思春期の子どもの凶悪事件が、連日のようにマスコミに報道される。
ニュースになるのは氷山の一角。事件を起こす子どもは、決まって
誰からも「いい子、やさしい子」と言われる。
自分本位で自我が発達していない、弱い子ども達なのです。

幼児期から少年期にかけて、子ども達が身に着けなければならない
大切な課題、それは「大いに遊ぶ」こと…。
子どもの頃に、その課題をやり遂げるには、母親や周囲の大人たち
の理解の有無が、大きく影響する。子どもが身につけなければなら
ない、大切な育ち合いの機会を、大人の見栄や、間違った子育てで、
奪ってはならないのです。

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