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思いやり(2)

我が家のビーグル犬・ヘブンを散歩させる公園の桜。満開を
過ぎ、ハラハラと散り始めた。

満開になるや、さっと散って
しまう"桜"は日本人の心。
日本人は、それを「潔さ」の
象徴、美徳としてきた。

また、その潔い姿に、人々は"この世の無常"を思い、戦国の武将たちは、己の生き様をそこに投影した。 

西洋に広く日本の武士道を紹介した新渡戸稲造。桜の美しさは、日本人の心の
美しさであり、「気品・優雅・純真」さであると表現した。

【心と体の健康情報  - 240】
~歴史から学ぶ~
「思いやり2」

明治23年、トルコ軍艦が紀伊大島の灯台沖で座礁沈没。艦長以下581名の
尊い生命が海に消えた。(詳細はメルマガNo244)

村人の必死の救助で69名が助かり、お寺や小学校に収容されたが、当時村に
は井戸もなく、雨水を飲み水にし、魚を売ってお米に換える貧しい暮らし。
みるみる蓄えが尽きて、食べさせるものがなくなった。最後に残った貴重なニワ
トリまで、トルコ人に食べさせたという…。

つい少し前の時代の日本人、親切で優しい心を持った人が多くいた。
「大和魂」 武士道精神が、庶民の心の中に息づいていた時代。 日本人に生まれた
ことを誇りに思い、質素で贅沢を慎み、貧しさを不幸とは思わない清貧な暮ら
しぶり…。貧しい中にも、もの事に耐える辛抱強さ、我慢強さがあった。
一つ、命にかけて、事に対処する覚悟」があった。
一つ、自分の利益よりも、周囲の利益を優先する、自己犠牲の精神があった。

トルコの軍艦沈没という、日本の海運史に残る大惨事から15年後、日露戦争
が始まった。

そのとき、乃木将軍が、敵将ステッセルに示した武士道の精神は、西洋諸国
に賞賛されたが、東郷提督率いる海軍も又、乃木に劣らぬ逸話を残している。

ロシアがその命運をかけて、はるばる派遣した精鋭バルチック艦隊を、東郷艦
隊は対馬海峡に撃滅した。その勝利は、世界の戦史に類を見ない輝かしい
ものになった。
1550年、フランシスコ・ザビエルが見た当時の日本同様、人を思いやる優し
い心を持った日本人。それが、この海戦における、幾多のうるわしい逸話とな
って、今に伝えられるのです。

トルコの軍艦が沈没した時同様、この海戦においても、波間に漂う敵兵を懸命
に救助し、医療、食事などに万全を期し、捕虜を暖かく遇している。
敵兵の水死体は海流に乗って、山陰の海岸に漂着した。付近の住民はこれを
引き上げ、手厚く葬り、冥福を祈ったという。

万里の彼方から来航、武運つたなく祖国に殉じた勇者に対する思いは、それが
敵であろうと変わりはない。うるわしい人間愛が、どの日本人にもあった。
海戦に惨敗して、総崩れになった敵艦隊の中から、逃れ行く一隻の駆逐艦が
あった。それを、「武士の情け、深追いはするな」と、見逃したりもしている。

ロシアの提督ロジェストウインスキーは、この戦闘で重傷を負い、人事不詳に
なって救助され、佐世保の海軍病院に収容された。東郷は直ちにこれを見舞い
、なぐさめの言葉をかけている。

東亜の小国日本が、大国ロシアを破るという、輝かしい勝利もさることながら、
日本国民のすべてが、武士道的精神にのっとり立派に戦ったことが、全世界の
好評を博したのです。そのような日本人の道義的態度は、国際社会における
日本という小国の信用を、いやが上にも高らしめたのです。

ただ不幸なのは、この勝利がその後の日本人の心を慢心させた。道義心が
どんどん低下していった。そして、昭和20年の敗戦へ、転がり落ちていった。

終戦後、平和を願うあまり、学校教育の場から、軍国主義的残渣が一掃され
ていく。その確認のため、占領軍の係官があちこちの学校を査察して廻った。
ある小学校で運悪く、乃木と東郷の肖像が物置から発見された。随行の校長
がハッと顔色を変えた。その時、査察官の口から意外な言葉が発せられた。

「乃木、東郷は、日本が生んだ世界に誇るべき武将です。私は偉大な二人を
尊敬しています。日本が今日の不幸を招いたのは、彼らのような立派な武将
がいなかったからではないですか? この肖像、廃棄するには及びません…」
                                   論語の友1月号より

戦後、小学校にあった二ノ宮金次郎の銅像は撤去され、消えていった。
ところが、占領軍司令官マッカーサーは、逆に「尊徳は日本におけるリンカーン
である。新生日本は、二宮尊徳の所業に学ばなければならない」と、奨励し
たのです。
それにも関わらず、左翼系の先生で占められた日本の教育現場は、こうした
日本人が誇りにすべき偉人たちまで、戦後教育の現場から抹殺し、子ども達に
教えようとはしなかったのです。

ですから私の脳裏に浮かぶ偉人は、ワシントンやリンカーン、ベンジャミン・
フランクリン、エジソンなど、西洋の偉人たちばかり。
                                        
3月、京都で開催された「第一回・日本を変えた、すごい人サミット」に参加した。
そのとき選ばれた日本の先覚者は、空海・中江藤樹・坂本竜馬・山田方谷・
吉田松陰・伊庭貞剛
の6名。
中江藤樹や山田方谷については、名前も浮かんで来ない。空海は歴史で学んだ
が、その偉業を語れない…。

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