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「てんびんの詩」から学ぶ

■ユダヤ商法に学ぶ
ユダヤ人は「倹約するほうが、金儲けより難しい」 と、私たちに教える。
「せっかく稼いでも、倹約して、無駄使いを止めなければ、財産を築き上げる
ことはできない」と…。

・20世紀の初頭、東欧の迫害から逃れるため、着の身着のままアメリカに移住。
  必死に働き、お金を蓄えたユダヤの人たち。ただ蓄え・倹約するのではなく、
  将来いざという時にそなえ、より重要な目的のために貯金したのです。

・そういった歴史的背景から、ユダヤ人は倹約家。金銭にこだわる。財布の紐を
  解く前に、その品物に値する価値と目的が、果たしてあるかどうかを仔細に検
  討し、見極める。熟考の末、支払う段になっても、値引きやサービスの余地が
  ないか交渉し、少しでも倹約しようと努力する。

・倹約はケチと混同されがち。が、ユダヤ人は一旦事態に直面したら、思い切っ
  て惜しげもなく大金を投ずるのです。                    
                                    「理念と経営2月号」

【吉村外喜雄のなんだかんだ  - 118】
「てんびんの詩から学ぶ」

毎年四月になると、新入社員の「飛び込み研修」を行なう。
研修は2~3ケ月続き、目標に到達した社員から順に修了していく。

最近はこらえ性がなく、折角難関突破して入社した会社を、辞めていく人が多
くなった。苦労の経験がないから、耐えられないのでしょう…。一番の問題は、
行き詰って悩んで親に相談したら、「嫌なら辞めてもいい…」と言う、子どもを
甘やかす親の存在です。

3月、商業界の一泊研修で、久しぶりに近江商人の物語、「てんびんの詩」を
鑑賞した。私の会社も研修で使ったが、鍋ぶたが売れた瞬間は、何度見ても
涙がこみ上げてくる。

この映画は、故"竹本幸之祐"監督(石川県羽咋市出身)が、鍵山秀三郎氏の
資金援助を得て、二十数年前に作られた名作です。
物語の中で、私たちの教訓となり、心にしみることばが随所に出できます。

母「働く人の喜びや、しんどさがわからんようでは、人の上に立てやしまへんえ
   …。人に出会うて、ご挨拶も出けんで、商人(あきんど)になれますか!」
  「商人は、自分を恥ずかしめるようなことをしてはいけません。 頼みます、
   お願いします…て、頭下げて、売れるもんやおまへんえ…」
(飛び込み研修の目的の一つに、きちんと挨拶のできる人間になることがある)

祖母「代々、分をわきまえることを大事にしてきました…。儲けの少ないときは
   始末をして、極力、出を抑えることや。ご先祖が、梅干や塩をなめてしのい
   できたさかいに、今日があるのです」
   
  「日頃商人(あきんど)は、質素でなければいけません。 しかし、商いのため
  やったら、惜しみなくお金を使う。 楽をするためや、贅沢のためにお金を使
  こうてはなりませぬ。自分が始末してでも、お客にちょっとでも有利な商いを
  する…。そのために、お金を使うことや」
(私の父親の時代の商人の基本的な考え方でした。ユダヤの商法と相通じると
  ころがあります)

百姓「百姓はなんぼ頑張って精を出し、きばっても、入ってくるもんには限り
   がある。食うだけで苦労して、一生終わるのが百姓や…。
  それに引き換え商人はいい。己の才覚と努力で、いくらでも発展するやな
  いか…」
祖母「子は今、親離れするための行をしとるとこや…。母親だけが辛いんでは
   ない、子の修行は親の修行でもある。大作も、それくらいの苦しさを乗り
   越えれんようでは、跡取りにはなれしません。 苦しさを乗り越えんと、
   一人前の人間にはようならん…」

母「あせったらあかん!一度決めたら最後までやり通すことや…。
   途中で投げたら、後悔することになるえ…」
父「商いは、天秤棒といっしょや…、どっちが重とうてもうまく担がれん…
  お客と売り手の心が一つになったとき、初めて商いが成り立つんや…」

母「うまいこと売ろう思うたかて、あきしまへん! 一生懸命生きている姿を
  知ってもらうしかあらしまへん…正直な子やな…、優しい子やな…、信頼
  できる人間やな…、役に立つ人やな…と思わはるさかい、商いがでけるん
  や…」

叔母「親戚に頼ったり、家柄でモノを売ろうとするさかい、売れしまへんのや。
   自分の商いをせなあきません。
   誰の力も頼らんと、自分の知恵と努力と人柄で商いをすることや…」
  「お前は自分のために鍋ぶた売ろうとしとるやろ。自分の都合ばかり考えと
  らんと、人のために商いをすることや…」
 
  「商いとは、お客様のお役に立つためにするもんや…。人の役に立ってみな
   はれ…、そんな人、誰からでも好かれ、モノが売れるようになるんや…」
   「家業を継ぐとは、自分をころして、お客様やお店のみんなのために奉公す
   ることや…」
  「商人に一番大事なのは、買うてくれるお客様の気持ちになって商いをする
   ことや…」

大作「人の道に外れたことをしては、商いはない…」(ふと、鍋ぶたを川に投げ
   れば、売れるのではと頭をよぎった時…)
   「親戚やからと、甘えとった…。叔母さんは鍋ぶた買うてくれるより、もっと
   大事なものをくれはった。商人になるための一番大事なものや…。
   それまで私は、ただ鍋ぶたが売れればいい、それだけしか考えなんだ…。
   買うてくれる人の気持ちなんぞ、考えもせんかった…」

ようやく売れた。物が売れた喜びと、見ず知らずのお客様が、私を抱きしめて
泣いてくれた感動が一緒になって…、商人ほど素晴らしもんはないと思うた。
「売るもんと、 買うもんの心が通わなんだら、モノが売れんのや」 ということを
…痛いほど身にしみました。
始める時に父親が、「売れたら分かる」と言うた意味…、売れてみて初めて、
「これが言いたかったんや…」と分かりました。

…このように、てんびんの詩は観るたびに、いろんな気づきを与えてくれます。
古き良き時代の商人の物語「てんびんの詩」。そこから、商人の心を学ぶ…。
どんなに時代が変わろうとも、"人と人との心の結びつき"は永遠です。

ところで、「てんびんの詩」の続編を知らない人が多い。
第二巻は、奉公先から中学へ通い、韓国で飛び込み行商を実習する。風俗習慣
の違い、言葉の壁、そういった苦難を乗り越え、「客とは何か」「売るとはどんな
ことか」を学ぶ。第一巻に劣らず、涙なしには見られない、感動の作品です。

三巻は、太平洋戦争という時代の流れに翻ろうされる。大作は召集され戦地へ。
敗戦でイギリス軍の捕虜収容所を経て帰国。戦後の財産税や農地解放で裸同然
に…。度重なる苦難を乗り越え、新たなる希望が…。感動の大作です。

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