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おそろしく長い口上

私が最初に勤めた会社が日立の代理店。翌年、東京オリンピックが開かれ、家電の全盛期に入った。まだ娯楽の少ない時代。 会社の慰安旅行、温泉での新年会など、皆、楽しみにしていた。
当時はまだカラオケがなかった。宴会では、一芸を持った人が次々と隠し芸をやった。
まず社長(先祖は前田家の家老)が席に座ったまま、コインを使った手品を披露。
次いで総務部長が舞台に上がり、本格的奇術を披露。日本舞踊を踊る女子社員、ギターを肩にラテン】を奏でる若手。
宴もたけなわになると、恒例の裸踊り。営業部長が両手にお盆を持って、素っ裸になって、舞台袖から飛び出してくる…。

中締めの後は、お定まりの下ネタ数え歌。「一つとせ、二階の女とヤルときにゃ
よいよい…♪」と、人の塊ができて、大合唱。皆、何か一芸を身につけようと、密かに努力したものです。その頃収集したのが 「下ネタ艶話」や「寿限無」。
カラオケ一辺倒の今の宴会風景とは、一味違った楽しさがあった。

【吉村外喜雄のなんだかんだ 第63号】
~ことば遊び~
「おそろしく長い口上・続き」

前号で紹介した「ういろう売り」の続きです。痰を切る薬ういろうを飲むと、やた
らと舌がなめらかになって、早口ことばがいっぱい出てきます。
チンプンカンプンですが、読むほどに可笑しみが増してきます。一文字一文字
意味を噛みしめながら、ゆっくり声を出して読むことから始めます。

……♪一ッぺぎへぎにへぎほし、はじかみ盆まめ盆米盆ごぼう。
摘み蓼(たで)つみ豆つみ山椒。書写山の写僧正。
こごめのなまごめ、小米のなまがみこみ、小米のこなまがみ。
繻子(しゅす)ひじゅす、繻子しゅちん。
親も嘉兵衛子も嘉兵衛、親かへい子かへい、子嘉兵衛親かへい。

古栗の木のふる切口。雨がっぱが番合羽か。
貴様のきゃはんも皮きゃ絆、我等がきゃはんも皮きゃ絆。
しっかわ袴のしっぽころびを、三針はりなかにちょと縫うて、
縫うてちょっと分出せ。
かいら撫子野石竹。のら如来のら如来、三のら如来に、むのら如来。
一寸のお小仏に、おけつまづきゃるな。細溝にどじょうにょろり。
京のなま鱈(たら)奈良なままな鰹、ちょっと四・五貫目。
お茶たちょ茶たちょ、ちゃっとたちょ茶たちゃ、青竹茶籠でお茶ちゃとたちゃ。
来るは来るは何が来る。高野の山のおこけら小僧。たぬき百疋、箸百ぜん、
天目百ぱい、棒八百本。

武具馬具ぶぐばぐ三ぶぐばぐ、合わせて武具馬具六ぶぐばぐ。
菊栗きくくり三きくくり、合わせてむきこみ、むむきごみ。
あのなげしの長なぎなたは、誰が長長刀ぞ。
向こうのごまがらは、えの胡麻からか真(ま)ごまからか、あれこそほんとの
ま胡麻殻。がらぴいぴい風車。

おきゃがれこぼし、おきゃがれこぼし、ゆんべもこぼして又こぼした。
たあぷぽぽ、たあぷぽぽ、ちりからからつつたっぽ。
たぽたぽ一丁だこ落したら煮てくお、煮ても焼いても食えれぬ物は、
五徳鉄きうかな熊。
どうじに石熊石持虎熊虎きす中にも、とうじの羅生門には、茨木童子が、
うで栗五合つかんでおむしゃるかの頼光のひざ元吉ず。

鮒きんかん椎茸定めてごたんなそば切りそうめん、うどんかぐどんな。
こしばち小棚のこ下に小桶にこ味噌がこ有るぞ、こ杓子こもって、こすくて
こよこせ。
おっとがってんだ、心得たんぽの川崎、神奈川保土ヶ谷、戸塚はしって
行かばゆいとを摺むく三里ばかりか、藤沢平塚大磯がしゃ小磯の宿を
七ツおきして早天さうさう相州小田原。

とうちん香、隠れござらぬ貴賤群集の、花のお江戸の花ういろう。
あれあの花を見て、お心をおやはらぎやっという、産子這子(うぶこはうこ)に
至るまで、このういろうのご評判、ご存知ないとは申されまい。

まいまいつぶり角出せ棒出せ、ぼうぼうまゆに、うす杵(きね)すりばち、
ばちばちぐわらぐわらぐわらと、はめをはづして今日おいでの何も様に、
上げねば成らぬ売らねばならぬと、息せい引っ張り東方世界の薬の元締め、
薬師如来も上覧あれと、ホホ敬うて、ういろうはいらっしゃりませぬかァ…♪

いかがでしたでしょうか? このような難しい長口上を、市川団十郎が舌も軽やかに演ずるのです。 一度見てみたいものです。何度も何度も繰り返していると、だんだん早口が板についてくる。 こんなバカバカしくも無駄なことが面白い!

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