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日本という国

■絵手紙詩人/大野勝彦氏

先月、絵手紙詩人大野勝彦”氏の講演を聞き、 感動の涙を流した。

熊本県の専業農家。平成元年七月機械を洗浄中に二本の腕をもぎ取られた。
「人生おしまいだ」。悲劇の主人公のような顔をしてベッドでうなっていたとき、両親、妻、子どもたちの家族愛に救われる。

”湧き出る生”への想いを詩に託し、”生きる喜び”を水墨画に、義手で表現するようになった。両手を失って初めて 「手は宝物」に気づいた。家族や人から受けた優しさを、 これからの人生すべてをかけてお返ししようと決めた。

半年後にはもう”詩画”の個展を開き、その後書き溜めた詩画を次々と出版し、様々な賞を受賞。全国各地、絵筆を持って講演して歩いている。 人生のどん底を味わって、本当の生き方を教わったという。「ありがとう」が祈りとなり、笑顔となり、今の幸福があるという。

【吉村外喜雄のなんだかんだ 第21号】
~日本人のアイデンティティー~
 「日本という国」

ウシオ電機の会長、牛尾治朗氏は、日本の企業には三つの強みがあると言っている。一つは「現場主義」、二つ目が「完璧主義」、 三つ目が日本人が持っている「集団主義」 。この三つがある限り、日本の製造業は不滅だという。

日本には、ヨーロッパ諸国のような職種による階級性がない。NHKのプロジェクトXを見ていて、 日本人は何かを作り上げるときに、プロジェクトチームを作り、集団で上下関係に関わりなく、現場で、 やれることは何でも助け合って、しかも完璧にやってしまう。これはすごいことです。

日本人の完璧主義は、病的で行き過ぎるくらい徹底している。その代表がJR。新幹線なんか、時報と同時に発車して、 もう数秒狂っただけでも気になる。その完璧主義が四十年間無事故につながっている。

私(吉村)は、仕事がら式典とかイベントを企画し演出する機会が多かった。その都度、 スタートから終りまで分刻みシナリオを書き、プロデュースするが、時間に一分も違わず終了した時、 緊張がほどけて皆抱き合って泣く。こんな国は日本だけでしょう。

それも最近は怪しくなってきている。こういった日本人固有の強みが、欧米から入って来た合理主義のもとに崩れ始めている。 豊かな社会になって、ものを考えなくなったのです。
戦後は日本人から個性が失われ、みんな同じになってしまった。子供の個性には関係なく、小学校の頃から、一流大学に入り、 一流会社に就職することを最終目的として、詰め込み教育をする。その結果、個性が失われてしまい、日本人が本来持っている、 ものづくりの能力が失われていく。

昔の子供たちは、職人になるもの、丁稚奉公をして商人になるもの、役人や医者になるもの、いろんな人生を選択した。 戦後世の中が豊かになるにつれ、目的が定かではないのに、みんな一斉に大学に進学し、サラリーマンを目指す。 自分に学問が必要かどうかわからないまま、大学へ行く。大学を出ていなければ、 一人前の人間として社会が評価してくれないからです。

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