ここ数週間、新聞のニュースを見ていると、世界の様々な国が民族・宗教問題などの争いの火種を抱え、悩みが尽きないようです。
【米国】
先月の二十五日、全米でキリストの最後の受難を描いた映画「パッション」が、公開された。宗教的偏見と、
ユダヤ系市民団体が激しく抗議行動を行っている。
【スペイン】
三月十一日、マドリードで列車爆破テロが起き、死者200人、負傷者1250人と、スペイン最大級のテロとなった。
北部バスク地方の分離独立を求める過激派組織の犯行と見られているが、国際テロ組織アルカイダが犯行声明を出している。
【タイ】
タイ南部の分離独立を狙う、イスラム過激派の武装組織が、インドネシアで同じように分離独立を目指す、
イスラムテロ集団に武器を供給していることが明らかになった。タイでテロを繰り返しては、マレーシア側に逃げ込み潜伏。
タイ政府も頭を痛めている。
【フランス】
公立校に通うイスラム系住民の子供を対象とした法案が、このほど国会で可決され、宗教上の慣習を盾にするイスラム教徒の反発を招いている。
この法案は、「顔をショールで覆って登校し、顔を覆ったまま学習することを禁ずる」というものです。
【吉村外喜雄のなんだかんだ 第23号】
~日本人のアイデンティティー~
「単一民族・日本人」
アメリカの人種差別。多民族国家がゆえに抱える問題も多い。
テキサス州は、元はメキシコ領。州人口に占めるヒスパニック系が、国境を越えてくる人たちで、年々増加の傾向にあり、人口の50%にならんとしている。
英語が話せない人が多いため、今では、スペイン語が英語と並んで、テキサス州の公用語になっている。
テキサスに古くから住む白人は、「州がメキシコ人に乗っ取られてしまうのでは」という恐怖にかられるという。
ロサンゼルスや、ニューヨークなどに住む白人が、黒人に持つ感情にも、少なからず同じものがあるようです。
アメリカ経済が落ち込んで、就職難となった1980年代、白人青年の不満が黒人やヒスパニックに向けられた。それにつれ、
KKK団の活動が活発化した。
「黒人二人が入隊テストにパスして、そのせいで白人二人が落とされた!
成績が上なのにだ! 平等を唱えるのもいいが、こっちは実力があるんだ!
奴らは、黒人という理由だけで受かったんだ」…。人種差別の根は深い。
現在、ヒスパニック系住民は、全米人口の一割程度二千万人だが、出生率が高いため、2020年には、
黒人の人口をしのぐのではと、心配されている。
それに引き換え、日本は単一民族国家。北海道には原住民のアイヌがいるとはいえ、人種問題にまで発展することはなかった。
四方を海に囲まれ、外部から閉ざされた国土に住む日本人。そこに住むすべての人が黒い瞳に黒い髪、
そして同じ肌色で同じ言語を話し、同じ風俗習慣のもとに暮らし、神教という共通の宗教を信仰して暮らす。
世界の国々から見れば、極めて稀なことである。
そこに、純度の高い文化と、特異なアイデンティティを持つ民族が育っていった。
この小さな島国に生まれ、そして育ったというだけで、自分は日本人であると言い切ることができるのである。逆に言えば、
日本人であることが当たり前過ぎて、日本国籍を持っていることをことさら意識したり、大切に守ろうとするものは誰もいない。
在日韓国人が日本国籍を取得しても、周りの日本人から「おめでとう」と歓迎の祝福を受けることはないという。
アメリカだったら、みんなでお祝いしてくれるのに…
毎年一万人近く、在日韓国人が日本国籍を取得する。韓国には親戚もいて、
韓国人の血を引く人が日本人になることを選択したとき、これからどのような日本人になるか、考えるという。
一方の米国は、多民族国家である。世界中から、様々な民族が移住し、様々な習慣を持ち込み、様々な言語の祖先を持ち、
様々な宗教観を持つ人たちが、他の民族と混ざり合って暮らしている。
米国国籍を取り、アメリカ人になるということは、自ら米国市民であることに誇りを持ち、国家に忠誠を尽くし、愛国心を育む、
大変重要で意味のある、感慨深いことなのです。